おはよう ページ8
次の日、いつも通り学校に着いた。昨日はとんでもない奇跡の連続だったな。
(蓮くんだって。へへ)
しかも、私の名前、呼んでくれたし。あの後爽快に部活あるからと手を振って出ていった彼は、やっぱり世界一かっこよくて。
そんなことを思い出しながら上履きに履き替えて、教室へ向かう。既ににぎわう廊下を抜けて、自分のクラスの前に着いた時。
「あー!Aちゃんだぁ、おはよ」
「おはよ…う」
「よ、Aじゃん」
「あれ、やっぱ知り合いなの?」
「やっぱ…?図書委員、俺ら同じだから」
入口で立ち話する高身長ペア。ラウールくんの声が聞こえて、返事と同時に顔を上げると…私の頭をいっぱいにしてる張本人までいて。
廊下にいる女子たちや、入口付近に座る女子が色めき立っているのに気付く。…すごいオーラだな、やっぱり。
「めめが委員会立候補するなんてら珍しいね」
「んー…まあ。色々?興味あったし」
図書室が好きな私にとっては、その言葉が単純に嬉しくて思わずニヤニヤしてしまう。
「あー、Aちゃんニヤニヤしてるう」
『いやっ、これは』
「ほんとだ、にやけ顔」
それを見て、からかうラウールくんと優しく笑う目黒くん。その甘い笑顔でさえも、私には眩しくて眩しくて。
『かっ、からかうのやめて、2人とも』
「ふは、ごめん」
謝る気のない謝罪も許してしまう。ずるいなあ。
「あ、朝礼始まっちゃうね。めめ、また後でねえ」
「ん。Aも、またね」
『あ、うん、またね』
手をヒラヒラ振って去る蓮くんの姿が、あの日の桜並木の下歩く蓮くんに重なって、胸がキュンとなった。
(…話せちゃった、今日も)
私とっては、信じられない前進。
【大ニュース。私の恋、大進展あり。】
先生が来る前、あべちゃんにメールを送った。昨日は頭がパンクしすぎて言い忘れてたから、今のうちに。
【おお。早く聞きたいけど、俺今から授業だから後で詳しくね】
こんな後輩の恋愛相談に飽きずに乗ってくれるんだから、ほんとに優しい先輩だ。…渡辺先輩は、絶対嫌そうな顔してはいはい受け流すだけだろうな。
「ふふ、Aちゃんたまに1人で顔芸するよね」
『…うそ』
「ほんと。でも可愛いから大丈夫だよ」
そんな携帯とにらめっこしてた私を見てラウールくんが笑う。可愛いのは多分ラウールくんの方だよ。
(…桜、今週で散っちゃうかなあ)
チャイムと同時に前を向く。思い出の桜は今年もすぐ散りそうだけど。
欠伸をひとつして、一限目の教科書を開いた。
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作者名:蒼 | 作成日時:2024年3月13日 9時