満開桜と咲かない恋 (ページ3)

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実はページ3

「あべちゃーん？あ、いた」
『げっ、渡辺先輩』
「お前ほんっと…失礼だよねえ」

滅多に人が来ない図書館だが、この人は話が別だ。
渡辺翔太。
あべちゃんと同い年、つまり先輩。
あべちゃんは高校でダンス部に入った。昔から興味があったらしく、練習動画を見せてもらった時は器用になんでもこなせる人がいるもんだと感心した。
そんなダンス部で同じだったのがこの男。
既に2人は夏に引退したが、最後の大会の日。
あべちゃんへ差し入れを持っていった私に
''お、阿部の彼女？''なんてニヤニヤしながら聞いて、失礼極まりなかった先輩。何かとそれ以降会うことが多く、引退後は放課後に図書室にいる事を知ってから同じように勉強を教わりにくるようになった。

「じゃん！俺！合格した！」
「おお〜！やったね」

バン！と自慢げに広げた合格通知書。上京して、東京の専門学校へ行くらしい。

『…おめでとうございます』
「あのねえ、もうちょい喜べや」
『おバカな先輩が無事に受かってよかったです』
「コイッツ……」
「コラコラ、女の子相手にそんな顔しない」

そんなこと言いながら、笑ってるのは誰よ。

あと一週間で卒業してしまう2人。
この図書室から居なくなるのは、少し寂しい。

「来年はAが受験生か」
『…大丈夫かなあ』
「俺が勉強見てあげるよ」
『あべちゃんも東京で一人暮らし始めるじゃん』
「まあまあ、たまには帰って来るって」

春は嫌いだ。出会いがあるって言うけど、大切な人達がたくさん居なくなってしまう。思わず俯くと、少し呆れたようにわらったあべちゃんがぽんぽん、と頭をなでた。

「ひとついい事教えてあげる」
『…なあに』

本当は卒業式の日に教えてやろうとしてたけど、と1枚の写真を携帯の画面に映した。

『え』
「ダンス部の後輩にラウールっているでしょ？Aとタメで、スタイル良くて有名な子。その友達らしくて。仲良しで同じクラスのイケメンがいるんだって見せてもらったヤツ。Aの話聞く限り、特徴似てるんじゃない？」

あの日顔は見えなかったが、はっきりと分かる。長身、少し襟足の長い髪型、広めの肩幅、細い腰。
クールな見た目と裏腹に、可愛らしい顔をしてピースをしているその写真をじっと見つめた。

＿＿＿＿そうだ、この人だ。

「俺が出せるヒントはここまで」
『なっ、名前とかは』
「この先は自分で答え合わせしなさーい」

意地悪、でも私にとっては前進だ。

私たちの卒業まで、あと1年。
外には桜が咲いていた。