2年 ページ2
「結局2年経っても、名前はおろかクラスも知らないとはね」
『あんまり意地悪言わないでよ…あべちゃん…』
「Aがウジウジしてるからだよ」
つい先日、某有名大学へ進学が決まった彼・阿部亮平。
男女問わず優しく正統派イケメンな人気者。
知り合ったのは中学の頃。部活が同じ、ひとつ上の先輩で
あべちゃんと高校が同じだった事は入学してから知った。
この学校は中高一貫だけど、私たちは2人とも高校からの外部入学だ。中学からは制服も統一されていて、判別できるのは上履きの色や体操着という少し特殊な形態。
''先輩だけど、タメ口でいいよ''
''でも…''
''俺、先輩キャラじゃないし''
中学の頃はいっていた園芸部はあべちゃんと私だけで、はじめての会話はそれだった。優しいのに、仲良くなると意外に毒舌なのが面白い所。
「その人、先輩か後輩かも知らないの?」
『しらない…制服じゃ見分けつかないし』
「ほんっとなんか…抜けてるよね」
頭のいい阿部ちゃんに言われると、言い返す言葉もない。
放課後、こうやって名前の知らない''彼''との出来事を
阿部ちゃんにイヤイヤ聞いて貰っている。
図書館は利用する人が少なく、図書委員になった私の権限もあり、放課後はある程度好きに使っていいと言われている。
大抵いるのは私かあべちゃん、あとはたまに人が来るくらい。
___2年前の3月。
合格発表がある日に限って、道に迷った外国人に声をかけられたり、道端で鍵をなくしたと言うおばあちゃんのお手伝いをしたり。私が合格発表を見るために学校に着いた時にはもう人なんかいなくて、番号の書いた看板が寂しげな張り出されていた。
『216、216番…』
辿っていくと、見つけた自分の番号。心の中でガッツポーズ。
『もう、桜咲いてるんだ』
帰り道、さっきはバタバタ走ってきたせいで気づかなかったが
校門までの真っ直ぐな道のりは満開の桜と落ちた花びらが相まって、空も地面もピンク色に染まっていた。
『綺麗ー…』
すっかりその景色に見とれていた時。
「ねえ。髪、なんかついてる」
『…へ?』
「取れた。お、桜の花びら」
「急にごめん、それだけ。じゃ」
背後に現れた人影。低くて甘い声、逆光で顔は見えなかったけど後ろ姿を見ただけでもスタイルの良さは一目瞭然だ。
確かにこの学校の制服だが、中学なのか高校なのか一貫校という制度のせいで見分けがつかなかった。
髪についた桜をはらってくれた彼に、その優しい声に。
私は一瞬で、恋に落ちた。
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作者名:蒼 | 作成日時:2024年3月13日 9時