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そうして、どれくらい経ったんだろう。
薄い唇がゆっくり開いて、優しい声が響いた。
「_____俺、Aが好きや」
風が吹いて、そのブラウンの髪が揺れた。
言葉が出なくて、変わりに溢れてきたのは大粒の涙で。
視界がゆらゆら揺れて、その姿が滲んでいく。
「え、嘘、俺泣かせてしもた!?」
『ち、違うの』
「でも」
『…好きなの、大好きです、向井くん』
絶対に叶うはずないと、閉じ込めた気持ちが零れて。
そんな私の声を聞いて、大きく目を見開いた。
「ほ……ほんま?」
『ほんま、ほんまだよ』
「なんやねんそのエセ関西弁。…かわいすぎやからやめて」
大きな手が頬にふれて、私の涙を拭った。
そこには、幸せそうに笑う向井くんが居て。
『あは、なんで向井くんも泣きそうなの』
「だって、Aが泣くんやもん。嬉しいねん」
『変なの…ホント変だよ、私たち』
もうきっとあの時から分かってたのにね。
とっくにお互い惹かれあっていた事も。
きゅっと結んだ手。
「俺、意気地無し卒業できた?」
『うん。私も、卒業』
「卒業?」
『向井くんに好きって言うの、我慢すること』
本当は何枚も書いた、渡せないままのラブレター。
連絡先も交換してなかったから、伝えたくても伝えられかった。
「……な、抱きしめてええ?」
『えっ、ちょっと』
「無理、ごめん」
返事をする前に、その腕の中に閉じ込められた。
おずおずと背中に手を回すと、少し強まった力。
「ほんまに好き」
『……学校だよ、向井くん』
「ええねん、誰かに見られても」
あの時みたいに、もう子どもじゃないから。
目を合わせて、おでこをくっつけて笑いあった。
やっと重なった、私たちの物語。
もう一度彼の手が私の頬を優しく撫でて、キスをした。
『…キスって、こんな感じなんだ』
「どう?まあこれから先も俺としかせんやろうけど」
ドヤ顔で言ってくるもんだから、思わず笑ってしまう。
そんな私を見て、とっても嬉しそうで。
10cmだった私たちの距離は0cmになって
2回目の、キスをした。
(向井くん、好きだよ)
(俺は、もーーっと好きやけど!)
image song : 初恋の絵本
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作者名:蒼 | 作成日時:2024年2月25日 20時