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orange ページ39

「おい向井!うるさいぞ!」
「ええ!?なんでなん先生!?」
「あはは、怒られてやんの」

騒がしい廊下で怒られてる人。一際耳で拾うその声。
いつも周りには友達がいて、人気者の向井くん。
前に関西から引っ越してきた別のクラスの男の子。

初めて話したのは、1年生の…いつだっけ?

「あれ、誰かおる?」
『わっ』
「ここで弁当食べとんの?めっちゃええとこよなあ」

昼休み、いつも一緒に食べてる子が休みだったから
お気に入りの中庭で1人お弁当を食べていた時。
後ろの準備室の窓がガラッと空いて、
声をかけてきたのは向井くんだった。

「この部屋な、俺の秘密基地」
『…秘密基地?』
「そ、サボる時は大体ここにおんねん」

ええやろ?と
太陽みたいな笑顔で笑う彼に、惹かれるのは簡単で。
そこからなにかと会う度によく話すようになった。

「なー、お前ら付き合ってんの?」
『えっ!?』
「はぁ!?ちょ、やめてや、ほんま」

ある日、そんな私達を見た男の子達に冷やかしを受けて
ちょっとだけ、距離感ができて。
近付いていたはずの距離は、一瞬で離れてしまった。
……年頃だもん。お互い、どうしても意識しちゃって。

あれからもう、2年。
私たちは1度も同じクラスになることは無く
すれ違っても、お互い気付いてない振りをして。
もう、最後の春を迎えようとしてた。

『あったかーい…』

あの時、出会ったあの懐かしい場所。
ポカポカと暖かい空気に思わず眠たくなる。
同じように1人お弁当を広げた。
桜が一つだけ咲いてるのを見つけて、ちょっと嬉しくなったり。

『…懐かしいなあ』
「ほんまやな」



_____それはずっと聞きたかった人の声。


いつの間にか開けられた後ろの窓。
振り返ると、あの日と同じように
頬杖をついてこちらを見つめた彼と視線があった。

『…向井、くん』
「やっと会えた、ここで」
『…え?』
「……俺、意気地無しやから。ここでまた会えんかなって、度々来て待ってた」

よいしょ、と軽々窓を乗り越えて私の隣に腰掛けた。
触れるまで、あと10cm。

「なんかさ、変に意識して、遠ざけてごめん」
『ううん、私だって』
「…傷付けたよな。嫌われても仕方ないと思ってん」
『嫌いになんか、ならないよ』

だってずっと私は向井くんだけが好きで。初恋で。
その言葉は言えずに、飲み込んだ。

「もう、高校も卒業やな」
『うん』
「……やから俺も、意気地無し卒業する」

そう言って私を見たはちみつ色の目が綺麗で、見つめ返した。

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設定タグ:snowman , 佐久間大介 , 目黒蓮   
作品ジャンル:恋愛
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作者名: | 作成日時:2024年2月25日 20時

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