White ページ29
「ラウールさん、お願いします」
「あ、はーい!」
スタッフに呼ばれてパタパタと駆けていく高身長の彼。
___いつも目で追っちゃうのは、そのスタイルの良さのせいじゃ無くて。
去年の夏、ツアーの衣装を担当したのが出会い。
彼らの存在は知っていたけど、特にファンでもなんでもなかった私。仕事をくれた上司には、そっちの方が好都合だと言われたっけ。
「この衣装、めっちゃ好きかも」
『よかったです。私が、手縫いで作ったやつで』
「ほんとに?すっごい。最高です、ありがとうございます」
40cm近く違う背丈。私に合わせてかがんで笑いかけてくれた笑顔が、忘れられなくて。
自分が心を込めて作ったものを、言葉にして褒めて貰えたのは初めてだった。
それから気に入って貰えたのか、ツアー以外でも担当する事になって。
「Aさんだ〜!おはよ」
『おはよう、ラウールくん』
「俺の衣装はAさん?」
『今日はね、目黒さん担当なの」
「えーー!めめずるい!」
今ではすっかり、名前で呼び合うほど仲良くなった。…まあ、懐いてくれてるって言った方が正しいんだけど。私は彼より年上だし。衣装部屋に来たラウールくんと、その後ろに現れた目黒さん。頬を膨らませて目黒さんをポコポコ叩く姿は、パリのランウェイを歩いてた人と同じには見えない。いい意味で。
「…てか、ラウールなんで俺に着いてきたの?」
「え?いいじゃん、別に」
『たしかに…ラウールくん、まだ予定時間じゃないよね』
これもいつもの事。先に着替えるメンバーに着いてきて、ずーっと居座るのがお決まり。
この前はテレビ収録の時に一緒だった佐久間さんに引っ付いてきてて。佐久間さんはちょっと嬉しそうだったけど。
今日は2人の雑誌撮影。モデル枠の2人だから珍しいことでも無い。
「まあいいや。んじゃ、お願いします」
『はい、合わせていきますね』
一つ一つ、合わせていく。その人に合う形、色、素材。
雑誌になるとテーマも細かく、組み合わせには気を使う。
「めめに合うね、それ。さすがだなあ」
『ありがとう、ラウールくん』
そんなワクワクした様子で見るラウールくん。
そんな所も可愛いなあ。
そういえば誰かが、カッコイイじゃなくて可愛いって思いだしたら終わりって言ってたっけ。
『わ、』
「おっ、あぶね」
ラウールくんほどでは無いとは言え、充分背の高い目黒さん。肩に合わせて衣装を見ていると、つまずいて抱きとめられる形になってしまった。
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作者名:蒼 | 作成日時:2024年2月25日 20時