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彼の夢が叶う度に、私たちの愛は減っていく。
あの日、彼と付き合うということはそういうことだと覚悟を決めたはずなのに、どうしても悲しくなってしまう。
…ごめんね、私が弱いのはわかってる。
深夜3時、テレビをぼんやり眺めながらソファに座る。
ガチャガチャと鍵が開く音がして、少し急ぎ足の彼がリビングの扉を開けた。
「ッA、ただいま」
『おかえり、亮平くん』
「寝ててよかったのに…ごめんね」
『ねえ、亮平くん』
私、最近謝ってばかりの亮平くんしか見てないよ。
『本当はね、いつも…打ち上げなんか出ないで欲しかった』
「…A」
『亮平くん、抱いてよ』
「っ」
『…これが最後だって言って、抱いて』
最後くらい、ワガママ言ってもいいよね。
きっと、どこかで終わりが来るってわかってた。
嫌いになったからじゃない。お互い、大切に思ってるから。
亮平くんは私の前に来て、そっと抱き寄せた後キスをした。
…やっぱりね、亮平くんは優しすぎるよ。
彼の服から香った、いつもの香水と、外の香り。
亮平くん、何言ってんのって怒ってよ。
大好きだよって言って、笑ってよ。
私より大事なものがあるあなたと、
あなた以外大事なものがない私。
ワガママ言って、愛想つかれちゃったかな。
…ライブもね、アンコールまで聴かずに帰ったんだよ。ごめんね。
亮平くんには、普通の男の子でいて欲しかった。
みんなに愛されるあなたじゃなくて、
たった1人の、私の大好きな亮平くんでいて欲しかったの。
「っ、」
『…泣かないでよ、亮平くん』
でも、結局…愛されているあなたを見るのも好きだった。
その涙を拭って、今度は自分から抱きしめた。
私の恋なんて、そんなものだよ。大丈夫。
零れそうになった涙をグッとこらえて、笑いかけた。
これが最後の、大好きなあなたとの、夜だから。
(今夜は泣いちゃう前に、帰るから)
image song: ライブ終わりに
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作者名:蒼 | 作成日時:2024年2月25日 20時