友達 ページ26
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(…よく飲んだぁ)
先に店を出たのは彼の面子を立たせるだけではない。
もう一つの目的は着信履歴の一番上にある【辰】の文字。
ちょっと震えている指先の理由は寒さか緊張か。
コール音が数回鳴る。掛け直そうと思った時コール音が途切れる。
「もしも［あー、ごめんなさい！今辰哉シャワー浴びてるから代わりに出ました！］…なんで貴方が…」
血の気が引いていくのが分かった。誰と聞かなくても分かる。
(…お姫様)
［もしかして折り返しですか？もう！彼そういうとこあるんです！ごめんなさーい！］
「…いえ」
(彼、そういうとこあるんです…か。まるで彼女だな)返す言葉も見当たらず、最低限の返事しか返せない。
［あ、もしかして彼女さんですか？］
「え？」
［辰ー！電話だよー。彼女って名乗る人から！］
「…っ！」
慌てて切った電話。
体中の力が抜けてその場に座り込む。ボロボロと玉のような涙が、頬を濡らす。
(…なんで彼女といるの？なんでシャワー浴びてんの？…なんなのよ彼女と名乗る人って…)
怒り、困惑、悲しみ、色んな感情が押し寄せてくる。
『ごめん！おまたせ…ってどうした？』
店の扉から出てきた目黒くんは私を見つけた瞬間、驚きをにじませる。
「ご、ごめん！飲みすぎちゃったみたい！」
取り繕うように笑顔でそう言うが、一度溢れた涙の止め方が分からない。
見られたくなくて、下を向くと熱いぐらいの温度と優しい力で包まれ抱きしめられる。
「は、離して」
『…離さない』
より強くなる背中に回る腕。感情がぐちゃぐちゃになりながらも、抵抗する。
「ほんとに大丈夫だから！もう！女の涙なんか信用しちゃだめだよ！笑」
おちゃらけたように言うも背中に回る腕の力は緩むことなく居座る。
『…友達が泣いてたら慰めるだろ』
「え？」
『…友達でいい。Aが何も考えず泣けるなら俺は友達でいい。
今日、Aと焼鳥を食べて楽しく別れた。酔ってるからそれしか覚えてられない。だから何にも気にせず泣け。』
彼が今どんな顔をしているか分からない。
ただ彼の優しさや温もりに包まれ、思わず堪えていた感情が漏れ出る。
彼の服の裾を握り、子供みたいに声を出して泣く私。そんな私の背中を彼は撫で続けてくれた。
私のはっきりとした記憶はそれが最後。
後はおぼろげに聞いた『また連絡する』という彼の優しい声だった。
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のん(プロフ) - とても面白い小説ではまってしまいました。主人公の気持ちがとても切なく、共感できる素敵な主人公だなと思います。どんな結果でも幸せになってほしい！これからも応援してます。 (3月15日 16時) (
レス) id: d13a90d6ad (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃん(プロフ) - とても面白かったです。思いあってるのにすれ違ってる2人も、彼女のことを考えてくれる目黒くんも、立場を考えると切なくなります。深澤担ですが主人公がしっかりとしてるのに、段階を踏んで目黒くんの優しさに触れていく過程が素敵でした。続き楽しみにしてます。 (3月15日 4時) (レス) @page38 id: 3a34fd6c9d (このIDを非表示/違反報告)
あたりん(プロフ) - 更新楽しみにしてます！続きがとても楽しみです！ (3月13日 22時) (レス) @page38 id: 8619ea3777 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お豆腐屋さん | 作成日時：2024年3月3日 21時
