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家にたどり着き、脱ぎ捨てたヒール。
まだ数回しか履いていないそれのヒールバックには血がついていた。
(慣れない靴は履くものじゃないな…)
鞄に入れていたウエットティッシュで血をふき取っていく。
段々と視界が霞んでいくのをぐっと堪えて、シューズボックスにヒールを戻す。
シーンとした部屋に電気と暖房をつけて、お風呂を沸かす。
(考えるな…考えるな…)
必死で自分にそう言い聞かせながら、冷えた体をお風呂で温める。
適当に乾かした髪をそのままにベットへと潜り込む。
冷たいベットにはまだかすかに辰哉の匂いが残っている。
真っ暗な室内をレースカーテン越しに月が照らし、壁にかけた時計の秒針が進む音が響く。
そっと息を付くと同時に、頭を鎮める枕が自分の意志とは反し静かに濡れていく。
「私馬鹿みたいだなぁ、一人で盛り上がってはしゃいで…。新しいワンピースなんか来ちゃってさ。」
あえておちゃらけたように言ってみても、気分は変わらないし、よりあふれる涙。
目の奥にこびりつくホテル入口で取られた男女の写真。
見なきゃよかったって後悔してももう遅い。
「っ、来る気がないなら待っててなんて言わないでよ…。」
行き場のない感情とドクドクと脈打つような靴擦れの痛みを押し殺すように目を閉じる。
【さっき旅行先のホテルの入口でふかおう見た！
あの感じ絶対付き合ってるじゃん！
ふかおう推しの私からすればこれ見れたから、ちょっと高いホテル代もチャラだわ。】
その投稿に付いた写真は高級ホテルの入口で肩を抱いておそらく中に入っていくのであろう男女の写真。
マスクしててもサングラスしてても分かる。だって自分の彼氏と彼の大事なお姫様なんだから…
「…もう、嫌だ…」
静かな室内に着信を知らさせるように震える携帯。切れては震えてを繰り返す。
ディスプレイには【辰】の文字。
いつもならなんでもないって顔できるけど、今日は上手くできそうにもない。
どうしても話す気にならず、布団を被る。
「…もう、これ以上…」
それに続く言葉は声になることなく消え、ただ静かに泣いた。
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のん(プロフ) - とても面白い小説ではまってしまいました。主人公の気持ちがとても切なく、共感できる素敵な主人公だなと思います。どんな結果でも幸せになってほしい！これからも応援してます。 (3月15日 16時) (
レス) id: d13a90d6ad (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃん(プロフ) - とても面白かったです。思いあってるのにすれ違ってる2人も、彼女のことを考えてくれる目黒くんも、立場を考えると切なくなります。深澤担ですが主人公がしっかりとしてるのに、段階を踏んで目黒くんの優しさに触れていく過程が素敵でした。続き楽しみにしてます。 (3月15日 4時) (レス) @page38 id: 3a34fd6c9d (このIDを非表示/違反報告)
あたりん(プロフ) - 更新楽しみにしてます！続きがとても楽しみです！ (3月13日 22時) (レス) @page38 id: 8619ea3777 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お豆腐屋さん | 作成日時：2024年3月3日 21時
